研究概要 |
2本のビ-ド型サーミスタ(B定数4,132K,100kΩ(25℃))を使用した差動式(測定および参照試験管内に生菌および死菌懸濁液(窒素制限:非増殖条件)を2mL入れ,両試験管に所定の濃度に調整したグルコース溶液1mLを加え,代謝熱による温度変化を測定)測定装置を作成し,30℃恒温水槽内で測定を行った.本測定装置によって約0.005℃の変化まで測定可能であった.微生物として大腸菌(Echerichia coli DH1),乳酸菌(Leuconostoc mesenteroides IFO3832),紅色非硫黄性細菌(Rodobactor sphaeroides),水素細菌(Alcaligenes eutrophus H16)および酵母(Saccharomyces cerevisiae IFO2043)の5種類の使用した.実験の結果以下の事が明らかとなった.(1)本研究で行ったマイクロサーモメトリにより,グルコース投与応答代謝熱による温度変化(ステップ型)測定が可能である.(2)簡単な熱収支より得た代謝熱生成速度評価モデルにより決定された代謝熱生成速度Q[J/s]は酵母(S.cerevisiae)および乳酸菌(L.mesenteroides)の生菌数と良好な比例関係を示し,生菌数評価の工業的指標パラメータとして利用できる.(3)A.eutrophus H16およびR.sphaeroidesのような窒素制限下でPHB又はPHA等の非窒素系有機予備物質を体内に蓄積する微生物は測定できる十分な発熱が無く温度変化測定不可であった.(4)E.coliはパルス型の温度変化を示し,20g-drycell/L以下の範囲では,多少ばらつきがあるもののQと比例関係が得られた.(3)の理由としては本測定系で測定可能な微生物はグルコースを細胞内に取り込み,その代謝カスケード中の初期段階で大きな反応熱を発生させる反応が存在していることが推測される.また,今回酵母および乳酸菌の測定濃度範囲(最大値)は酵母の対数期及び定常期で1.2×10^8及び2.0×10^8CFU/mL,乳酸菌(定常期)は9.0×10^<10>CFU/mLであった.より低菌体濃度における測定系改良の検討が必要である.
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