制御遺伝子導入による有用二次代謝物生産に関わる構造遺伝子群の発現

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09750865
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 倉田 博之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90251371)
• キーワード: 植物培養 / バイオリアクター / 遺伝子組換 / アントシアニン / 制御因子 / 生産

研究概要

バイオリアクターの開発研究を通してイチゴ培養細胞によるアントシアニン生産、コーヒー細胞によるプリンアルカロイド生産の促進に光が強い影響を与えること、また、活性酸素の関与が示唆された。一方、光によって有用二次代謝物生産が促進される植物培養細胞における光の利用効率を向上させるために遺伝子組換え技術を検討し、植物の光レセプターであるフィトクロムの遺伝子を過剰発現させることによって光関連遺伝子の発現の促進に成功した。これより二次代謝の酵素(構造)遺伝子自体ではなく、例えば、光に対する感受性を変化させるフィトクロムのような制御に関わる遺伝子の導入によって植物培養細胞の酵素系の発現が制御できると考えた。
そこで、植物の二次代謝物合成系全体の制御に関連するタンパク質制御因子をコードする遺伝子を植物培養細胞に導入することによって有用二次代謝生産を促進させ、バイオリアクターに利用することを検討した。一般にアントシアニン(花の色素)合成のように植物の二次代謝生産は特定の時期に特定の器官で起こる。ここで言う"制御因子"はこのような二次代謝物合成酵素系の発現を誘導するタンパク質である。また、植物における二次代謝生産に、光、活性酸素が関わる例が多いので、アントシアニン酵素誘導因子Lc(トウモロコシ)の他に、光制御系(フィトクロム)、活性酸素発生系(グルコースオキシダーゼ)の二つの制御系を取り上げ、一つの制御因子の導入によって複数の二次代謝関連酵素がどのように誘導されるのかを検討している。

研究成果

• [文献書誌] Kurata,H., Takemura,T., Furusaki,S.: "Light-controlled expression of the chakone synthase promoter in tobacco BY2 cells" Proceadings of 4th Asia-Pacific Biochemcal Ergineering Conference. 1. 97-102 (1997)
• [文献書誌] Kurata,H., Kaizuka,Y., Furusaki,S.: "Mathematical model of Light-enhanced expression of the CHS premoter in tobacco BY2" Proceedings of 7th International Conference on Computer Application in Biotechnology. (in press).
• [文献書誌] Kurata,H., Furusaki,S., Kado,C.I.: "Transgenic plant cell culture system for enhancing the expression of a Light-regulated gene using reocmbinant phytochrome" Horizon of Biochemical Engineering. 57. 165-169 (1997)
• [文献書誌] Kurata,H., Achioku,T., Furusaki,S.: "Enhanced Bioconversion of purine alkaloids using intermittent Light irradiation in Coffea arabica cell culture" Recent Developments in Biochemical Engineering. 61. 164-167 (1998)
• [文献書誌] Kurata,H., Matsumura,S., Furusaki,S.: "Light irradiation causes physiological and metabolic changes for purine alkaloid production by Coffea arbica cells" Plant Science. 123. 197-203 (1997)
• [文献書誌] Nakamura,M., Kurata,H., Furusaki,S., et al.: "Gas phase composition alters cell growth and anthocyanin production in strawberry cell suspensions" Recent Developments in Biochemical Engineering. 61. 144-147 (1998)