動物細胞の形態や凝集が細胞増殖や細胞由来の代謝産物であるG-CSFの生産に関係することが示唆され、G-CSF生産に及ぼす細胞集塊を検討するために細胞凝集とG-CSF生産との関係を調べた研究では、数個の凝集細胞がG-CSF生産を著しく増加させる結果が得られていた。一方、細胞形態に関しては、細胞の形態とG-CSF生産を検討した研究では、細胞が、球状にあるときよりも伸展状態の方がタンパクの生産性が高いことが見いだされ、G-CSF生産に細胞形態が関与することが示された。細胞形態は細胞骨格に依存するため、細胞骨格が細胞内の代謝やタンパク生産に何らかの影響を及ぼすと考えられる。本研究では、細胞骨格と細胞の増殖やタンパク生産との関係を明らかにすることを目的とし、遠心力を負荷することによって細胞骨格に物理的な刺激を与え、細胞骨格やG-CSFの生産性に及ぼす影響を検討するとともにタンパク生産に適した細胞状態や培養操作条件を見いだすことを目指す。 本年度においては、動物細胞に遠心力を負荷する装置を購入し、細胞培養用フラスコの平坦な基底面に細胞を接着させて増殖させる培養が可能なことを確認した。現在では、遠心力負荷時におけるコンタミネーションの有無や長期の培養の可能性について検討している。 今後は、細胞増殖やG-CSF生産性、グルコース代謝に及ぼす遠心力の影響ならびに細胞形態に重要な細胞骨格と遠心力との関係について実験的に検討し、目的産物であるG-CSFの生産性を向上させる条件を検討する予定である。
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