セレン酸還元微生物のキャラクタリゼーション セレン酸を含む分離培地から、セレン酸還元能を有する菌株のスクリーニングを行った結果、海洋、河川などの様々な環境から少なくとも6株のセレン酸還元菌の純粋培養に成功した。透過型電子顕微鏡観察によってこれらの菌体内外にセレン粒子の沈着が認められ、その大きさは、大きいものでは1マイクロ、小さいものでは50-100ナノメートルの粒径を有していた。また、一部の粒子には、有機模と思われる粒子を覆う膜の存在が確認された。これら菌株に対して、温度、pH、増殖のための栄養素など、それらの培養特性について把握した。また、PCR法などの遺伝子工学的手法を用いた16SrRNAの塩基配列の比較したところ、腸内細菌科に属する新種、新属の微生物であることが判明した。現在、これらの結果は、国際ジャーナルに投稿準備中である。 セレン結晶の合成条件の解明 セレン結晶粒子の合成条件の調査では、詳しい合成条件は現在までのところ、明確な条件を見だせてないが、培地に0.1から1モル程度のセレン酸が存在する条件においても生育可能であり、セレン酸を赤色の単体セレン粒子として、沈着、除去できた。また、セレン酸の還元、微生物株の生育には炭素源として、糖類が最もよく、スクロースが最適であった。また、得られたすべての株は、セレン酸と同時に硝酸をも生育のための最終電子受容体として利用でき、今後、硝酸存在下におけるセレン酸の還元、粒子の生成を調査し、誘導酵素系の解析をも含めて行う予定である。 変異株の作成 ニトロソグアニシジン(NTG)を用いた変異薬剤による変異操作及び、大腸菌との接合伝達を利用したトランスポゾンTn5による遺伝子挿入に基づく変異操作によって、NTGでは1株、Tn5では少なくとも2株のセレン酸還元能を著しく低下している変異株の獲得に成功した。現在、これらの結果は、国際ジャーナルに投函準備中の内容として、更に変異株の解析、目的遺伝子のクローニングを進展中である。
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