セレン酸還元微生物のキャラクタリゼーション スクリーニングの結果得られたセレン酸還元微生物株(淡水2株、海洋1株)の16SrDNAシーケンスにもとづく系統分類解析を行った。その結果、腸内細菌科に属する新属、新種の細菌であることが強く示唆され、NJ法を用いて系統樹を作成したところ、系統樹上において、既存の腸内細菌の属種とは独立して分鎖していることが確認された。また、これら分鎖場所の異なる3株が系統樹上の同一の場所にクラスタリングすることが判明し、3株は同一新属の異種微生物であると考えられた。また、培養特性では、淡水より得られた2株は、嫌気条件下でセレン酸を単体セレンまで直接還元し、セレン酸の還元はマルトースなどの糖類を炭素源として用いた時、最も促進され、セレン酸還元時における培養特性は既存のセレン酸還元菌とは異なっていることが明らかとなった。 セレン結晶粒子の観察、解析 微生物によるセレン酸の還元に伴って生じるセレン粒子の電子顕微鏡観察などから、粒子を覆う膜の存在が確認され、セレン酸還元反応が細胞膜上で行われていることを示唆する観察結果が得られた。また、生成される粒子はいずれも球形に近く、ほぼ純粋な単体セレンで構成されており、菌体内外を問わず形成されることが分かった。現在、結晶材料として応用面を含めた評価を行っている。 セレン還元に関する遺伝子の探索、解析 セレン酸還元能に影響がみられるトランスポゾン変異株の培養特性について解析したところ、野生株の20-30%程度のセレン酸しか還元されなかった。また。これらの株はいづれも、硝酸還元能は野生株と変わらない他、セレン酸存在下、好気条件における増殖が認められることから、硝酸還元代謝、好気代謝とは独立なセレン酸の還元に関与する遺伝子の欠損によってこれらの表現形が誘発されると考えられた。現在、トランスポゾンを含んだ関連遺伝子のクローニングを展開している。 なお、これらの成果は、2報の国際ジャーナル誌に投稿予定である。
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