バイオセンサーの集積化・多機能化のために微小領域に対して個別の生体材料を固定化する方法が求められている。しかし異なる生体材料を順次固定化する方法は種類の増加に対応することが困難になり、固定化位置を指定する方法では微小化が進むにつれて制御が困難になる。そこで本研究では、最近微小な光学デバイス構築のために開発されたFluidic Self-assemblyの手法を拡張し、酵素固定化に適用することを試みた。これは、配置したい粒子と同程度の大きさの構造を基盤側に設けることで、液中で展開した粒子がその構造にひとつずつ自律的に配置されるという手法である。 デバイス作製ではまずガラス基板上に金の薄膜微小電極を作製した。さらに厚膜用ネガ型フォトレジストを用いてフォトリソグラフィーを行い、各微小電極上にピット(くぼみ)をひとつずつ形成させた。作製したデバイスを適当な容器中で所定の溶液に浸した後、ピット上に酵素固定化ビーズを展開させ、デバイスに適当な勾配をかけてビーズを配置した。顕微鏡下で基質を添加し、2次元高感度画像測定システムで発光を測定した。 ペルオキシダーゼ(HRP)固定化ビーズを配置し、そこにルミノールと過酸化水素を添加したところ、いずれのピットからも化学発光が確認できた。つぎにダミ-の酵素だけを固定化したビーズとHRPだけを固定化したビーズを混ぜて配置し同様の実験を行ったところ一部のピットだけからのみ化学発光が見られた。続いて、一般的な酸化酵素にこの方法を適用した。グルコースオキシダーゼとHRPを同時に固定化したビーズを配置したところ、ルミノールとグルコースの添加により化学発光が見られた。さらに、前述した3種のビーズ酵素間の化学クロストークについて調べたところ、隣接したピットにある酵素の影響を受けないことが確認できた。
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