前年度得られた分解菌を用いて、分子量2500、5000程度のポリヒドロキシスチレンの分解性を検討した。赤外吸収スペクトルを測定した結果、いずれの場合もカルボン酸に由来する吸収が確認できた。しかし、GPCによる分子量の測定では分子量2500のものが2400程度に分解しただけであり、分子量5000のもについてはほとんど変化が見られなかった。このため、再度分解菌のスクリーニングを行った。分解菌を探索する土壌としては、産業廃棄物処理場、スチレン製造工場、ゴミ集積場、果樹園などから採取したものを使用した。集積培養は液体培地にポリマーの微粉末を懸濁させた培地を用いて行った。1バッチを約1ヶ月間として3度繰り返し行い、3度目の培養液を寒天平面培地上に接種し分解菌の単離を行った。その結果、数種の糸状菌とバクテリアが得られた。また、これと別に寒天平面培地上に有機溶媒に溶解したポリヒドロキシスチレンを噴霧し、培地上にポリマーの薄膜を形成した寒天平面培地を用いたスクリーニングも行った。ポリマー薄膜を有する寒天平面培地上に土壌を接種し、約2週間培養した結果、数種の糸状菌が得られた。これらの方法で得られた菌のポリヒドロキシスチレン分解性をポリマーの微粉末を懸濁させた液体培地を用いて検討した。その結果、後者の方法で得られた菌に比較的高い分解性が得られた。約1ヶ月の培養後、分子量2500が2200に、5000が4800程度に低下していた。さらに、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体についても分解性を検討したが、分子量2500程度のものでもほとんど分解が確認できなかった。
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