研究概要 |
ダイマー型アルキルピリジニウム(4,4'-(1,6-ヘキサメチレンジオキシカルボニル)ビス(1-ドデシルピリジニウムアイオダイド)を殺芽胞剤とし、Bacillus subtilis ATCC 6633 芽胞に対する作用を自記分光光度計を用いて調べた。その結果、1〜5μMの低濃度領域では通常の薬剤と同じ発芽後増殖阻害作用を示したが、10μM以上の高濃度領域では短時間で発芽阻害作用を示し、薬剤の急激な吸着作用が示唆された。 薬剤処理後の生残芽胞数計測のため、反応停止剤(ドデシル硫酸ナトリウム)および菌数測定のための回復培地の検討を行った。結果、反応停止剤濃度が20μMまでは濃度上昇とともに薬剤殺芽胞活性は低下したが、25μ以上の濃度では反応停止剤自体の活性のため見かけの殺芽胞活性が上昇した。したがって、反応停止剤濃度として20μMが最適であった。回復培地として、標準寒天培地またはSCDLP培地にドデシル硫酸ナトリウムを含むものと含まないものを用いて薬剤処理後の菌数測定を行った。その結果、ドデシル硫酸ナトリウムを含まないSCDLP培地の使用が最適であった。また、SCDLP培地中の界面活性成分が、残存薬剤の活性を阻害し、また薬剤で損傷した(死滅していない)芽胞の再生に効果のあることが示された。 走査型電子顕微鏡観察により、殺芽胞過程での芽胞形態変化を明らかにした。すなわち、薬剤は、短時間で芽胞表面にブレッブを形成、それらをベシクルとして脱離させるとともに芽胞表層構造を破壊する。芽胞は、破壊個所から内容物を漏洩し、死滅する。 現在、ブレッブから生成すると思われるベシクルの収集方法を検討している。十分量のサンプルが取得できれば、通常の物理・化学的処理の後、各種電気泳動法による分析・分取等を行い、ベシクルの成分を分析、生化学的組成を解析する予定である。
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