本研究では、既知のPseudomnas putida由来のナフタレンジオキシゲナーゼ遺伝子に、我々が先にクローニングしたAcinetobacter sp.YAA株由来のアニリンジオキシゲナーゼ遺伝子の一部を組み込み、この組換えDNA分子を各種細菌に導入し、発癌性を有するナフチルアミンの分解菌を新規に育種することを目的としている。 平成9年度は、組換えDNA分子の構築と大腸菌での遺伝子の発現を目的に、まず、ナフタレン分解菌P.putida PpG1064(NAH)から抽出したナフタレン分解ブラスミドNAHを鋳型として、ナフタレンジオキシゲナーゼ遺伝子nahAaAbAcAdをPCR法により増幅し、これを大腸菌にクローニングした。次いで、アニリンジオキシゲナーゼ遺伝子atdA1A2A3A4A5のうち、アミノ基の認識と脱離に関与すると推定されるA1及びA2蛋白をコードしたatdA1A2遺伝子部分を同様に増幅し、ナフタレンジオキシゲナーゼ遺伝子のnahAcとnahAd間にある制限酵素Sal/I部位に挿入し、大腸菌ヘクローニングした(実験の都合上、挿入位置を変更した)。得られたクローンから組換えブラスミドを抽出し、制限酵素分析を行ったところ、設計した組換えDNA分子が得られたことがわかった。 平成10年度は、まず、この大腸菌クローンを用いてナフチルアミン分解試験を行ったところ、残念ながらナフチルアミンの分解能を持たないことがわかった。発現の問題を考慮して、この組換えDNA分子を遺伝子供与株の属するPseudomonas属細菌及びAcinetobacter属細菌へ導入するために、グラム陰性菌用ベクターpKT230へつなぎ換え、Pseudomonas putida KT2440株及びAcinetobacter sp.BD413株に導入を試みたところ、KT2440株の組換え体は得られたが、BD413株への導入には成功しなかった。そこで、KT2440株の組換え体を用いてナフチルアミンの分解試験を行ったが、HPLCでの分析の限りでは、その分解は認められなかった。現在、Acinetobacter sp.BD413株へのクローニングを急いでいる。
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