研究概要 |
本年度に取り組む課題は申請した研究計画にあるように1、分子モジュールAの設計、2、分子モジュールBの作製、3、分子モジュールA・Bの連結である。 1、エイズウイルス外膜タンパクgp41に対する抗gp41モノクローナル抗体の抗原親和性は完全抗体で4.2x1010/M,H鎖で2.5x108/M,L鎖で8.3x108/Mとなり、抗gp41抗体はL鎖の方が重鎖(H鎖)よりも親和力が高かった。さらに、この抗体の塩基配列を調べたところ軽鎖(L鎖)の超可変領域(CDRL)-1はfull sequence(16個)のアミノ酸が挿入されており、その分、CDRL-3(9個)が短くなっていた。これはL鎖CDR-1が抗原認識に深く関与していることを示唆するものである。そこで、このCDRL-1ペプチド16merを合成し、CDスペクトルによる解析を行ったところ、この抗体L鎖のCDR-1ペプチド(16mer)は、gp41の保存領域抗原と非常に強い相互作用を持つことが判明した。 2、ヘミンに対するモノクローナル抗体1D3、人工型ポルフィリンであるTCPP(テトラカルボキシフェニルポルフィリン)に対するモノクローナル抗体2C12をそれぞれ作製し、それら抗体の可変領域の塩基配列をH鎖およびL鎖について行った。両抗体のH鎖はほとんど一致しているのに対し、L鎖には多くに変異が認められた。1D3抗体L鎖はほとんどヘミンを結合しないのに対しH鎖は104/Mのオーダーで結合しており、抗原認識の主な役割は1D3抗体の場合H鎖にあると考えられた。また、H鎖上の超可変領域(CDRH)-1,-2,-3すべてをペプチド合成し、TCPPとの反応性を調べたところ、驚く事にCDRH-2の僅か17mer単独でも抗体可変領域のアミノ酸約230個が構成している高度な抗原認識部位よりも高い抗原親和性を示した。 3、1D3抗体のCDRH-2(17mer)および抗gp41抗体のCDRL-1(16mer)を連結する最適なスペーサーを分子モデリングから推定した結果、-Gly-Pro-で結んだ上記1、2のCDRの35merのペプチドが、エイズ抗原及びポルフィリン分子が互いに接近すると計算されたのでこの分子を一段で合成した。
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