研究概要 |
モレキュラーインプリンティング法(以下、M法)は、認識対象分子に対してテーラーメイド的に分子認識材料を合成する方法として知られている。しかし、これまでM法で合成された高分子は疎水性を示すため有機溶媒系でのみの合成及び分子認識能の評価しか行われず、そのため認識対象とする分子も非常に限定されていた。本研究では、水系においても利用可能な分子認識材料の開発を目的として研究を行った。この目的のため、M法で高分子を合成する際にメタクリル酸2ーヒドロキシエチル(以下2-HEMA)という水酸基を持つモノマーを加えて重合することにより高分子に親水性を付与し、水系において利用することを検討した。 1)今年度は植物ホルモンの一種であるインドール酢酸をモデルのテンプレートとして用い、機能性モノマーにN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを用いた。そして架橋性モノマーのエチレングリコールジメタクリレート、水酸基を持つモノマーの2-HEMAを加えてUV光照射下で高分子を重合した。 2)合成した高分子を液体クロマトグラフィー用カラムに充填し、保持時間を指標としてインドール酢酸の高分子に対する親和性、選択性について評価したところ、HEMAを加えることによりアセトニトリル/リン酸バッファー(90:10)という条件において高分子に対して親和性を示した。一方、HEMAを加えずに重合した高分子に対しては親和性が非常に低くかった。このことからHEMAを加えることにより、含水溶媒中においても相互作用可能な環境が付与されるということがわかった。 平成10年度は糖類を認識対象分子とする高分子について検討を行う予定である。
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