α-ヘリックス構造を有するポリペプチドの側鎖配列規則性に着目し、側鎖間での速やかな電子移動発現が期待できるルテニウム錯体ペンダントポリペプチドの合成を、コンピュータ分子モデリングを参考にしながら試みた。 側鎖にルテニウム錯体をペンダントしたポリペプチドの分子モデル設計 ポリペブチドとしてポリグルタミン酸誘導体を選択し、そのα-ヘリックス3周期あたりの構造を分子モデル支援ソフト(CAChe MOPAC)を用いて視覚化した。ルテニウム錯体としてトリスビピリジル錯体(Ru (bpy)_3^<2+>)を用い、エステル結合でペンダントした高分子の場合、最近接錯体間中心距離は8.9Åと計算された。ルテニウム錯体を球状分子として考えた場合の分子半径は4.9Åであるため、錯体が100%導入された状態の高分子構造はかなり密な構造となるが、電子移動には有利であることが推測できる。さらに、主鎖からのアルキル鎖長や導入率をかえた場合の分子間距離についても検討を行い、長いアルキル鎖長を導入することで錯体間距離を調節できることが明らかとなった。 側鎖にルテニウム錯体をペンダントしたポリペプチドの合成 上記の計算に基づき、相当する高分子の合成を行った。導入率は現在のところ約20%、50%程度となっており、高分子反応で錯体を導入する際の錯体の立体障害が低導入率の原因として考えられる。側鎖アルキル鎖長等をかえることで、導入率の改善が期待できる。得られた高分子は、同濃度の錯体分散膜に比較して低い蛍光強度を示しており、分散系等に比べ速い電荷移動またはエネルギー移動が期待できるものと考えられる。
|