研究第2年次は、気体分子の水への溶解加速を中心として、物理化学過程への磁場効果を追及した。第1年次では、密閉された容器中で水と接した酸素の圧力を測定し酸素の溶存量を推定するという予備実験をおこなった。この結果では、十分時間を経過した後の(平衡状態)溶存酸素量は外部磁場によらないが、外部磁場下で初期段階の溶解の速度が加速されるという結果を得ていた。この原因を説明するために、磁場下と水中での磁化率の不均一により磁気対流(溶質=溶存酸素=を含んだ水が流動する)が生ずるという仮説を立てた。今年度は、溶存酸素計を用いて直接溶存酸素量を直接測定するとともに、酸素の代りに二酸化炭素(酸素に比べて磁化率が無視できるほど小さい)を用いた対比実験をおこなった。この結果、予備実験の結果が再現された。また、二酸化炭素では溶解過程の加速は観測されなかったにもかかわらず、酸素を共存させると二酸化炭素の溶解まで加速されることが観測された。これら実験結果は、上記仮説の磁気対流が酸素の溶解加速の原因であるという考えを裏付けるものである。これら磁気対流の大きさの数字的な評価をおこない(該当の実験系においては流速10mm/s程度)、磁場下での流動系の速度過程を論じる場合には、磁気対流を無視してはならないことを主張した。更に、この効果の工学的応用として、磁気送風器(可動部を持たない送風器)を提案した。また、第1年次に検討した磁場下の平衡論に関して、磁気アルキメデス浮上(磁場下で見かけ上の重力を小さくすることによって物体を浮上する)の手法について検討し、水滴を酸素気体中で浮上されることに成功した。
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