前年度に引き続き、溶融炭素塩中でのニッケル酸化反応の詳細を調査した。ニッケルの酸化反応は二段階であり、一段目の反応はO^<2->イオンが、二段目の反応は炭酸イオンが酸化種として作用していることが示唆された。このような二段階の酸化反応が起こる理由としてはニッケル表面に形成される酸化物の保護膜中における反応イオン種の拡散過程が影響を及ぼしているものと考えられる。 溶融炭素塩中における酸化ニッケルの電極反応特性を、サイクリック・ボルタンメトリー法および定常分極法を用いて評価した。二酸化炭素分圧依存性に関して、溶融炭酸塩中で安定な金電極との比較では、ほぼ同様な依存性を示した。また、交換電流密度を電極活性の目安とすると、金と酸化ニッケルとで大きな違いは見られなかった。すなわち、酸化ニッケルが電極として用いられているのは、触媒活性が優れているためというよりも溶融炭素塩中での安定性が評価されているためであるということがわかった。 酸化ニッケルに替わる電極材料として、非酸化物セラミックスを対象に溶融炭素塩共存下での安定性の調査を行った。炭化硼酸(B_4C)は空気中650℃では比較的安定であり、X線回折による分析では不純物は検出されなかった。溶融炭素塩中共存下での100時間の加熱実験では、不純物は検出されなかったものの、試料の体積が減少しているように見られた。炭化硼素は熱アルカリには弱いとされているため、一部が炭素塩中に溶解したものと考えられる。
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