電気化学的合成法である陽極酸化を用いてランタンやサマリウムなどの希土類イオンを含むニッケルおよびコバルト層状酸化物膜の作製を行った.白金基板上に電析させた希土類を含むニッケル層状酸化物膜ではアルカリ溶液中、陰分極下において特徴的なアノード電流が観察された.このアノード電流は、電析膜の表面構造に違いにより、電流の大きさが変化し、白金基板上に析出した膜でのみ観察できたこと.したがって、電極電位のカソード掃引時に白金基板上で発生した水素が溶液中の水酸化物イオンと反応することによりアノード電流が出現したものと考えた.これは、希土類-ニッケル層状酸化物膜が、膜内に水素を貯蔵できるためである. オートクレーブを用い高温でのコバルト層状化合物の電析の検討も行った.80度以上の温度で電析を行うと基板上に直接結晶化した電析膜が生成した.電析膜の構造は電解電位に依存し、電極電位が+0.5Vよりも負の時には、Co_3O_4で析出し、+0.9Vよりも正になると主にCoOOHとして析出することが分かった. 硝酸コバルトと硝酸サマリウムの混合溶液を用いた電解では、コバルトが電析する時に膜内にサマリウムが取り込まれることが分かった.電解温度を80℃以上にすると、コバルトのみの電解液で電析した場合同様に、直接結晶化したCoOOH複合酸化物膜を作製することができた.しかし、膜内に希土類元素が存在することによってc軸方向の格子定数が大きくなった.これは、取り込まれたサマリウムイオンが、層状化合物であるCoOOHの層間に存在することによって、c軸方向の結晶格子だけが伸びているためだと考えられる.
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