研究概要 |
酸素イオン伝導体は燃料電池を初め広範囲な応用分野を有する機能性材料である。現在、酸素イオン伝導体としては蛍石型酸化物が知られており、耐酸化還元性からY_2O_3安定化ZrO_2が専ら使用されてきた。しかし、Y_2O_3安定化ZrO_2の酸素イオン伝導性は低いので、さらに高い酸素イオン伝導性を有する材料の開発が望まれている。本研究ではさらに優れた酸素イオン伝導性を有する材料の開発を目的にPrGaO_3系とアルカリ土類一Ga系酸化物からなる複合酸化物の酸素イオン伝導性を検討した。その結果、Prサイトに添加するカチオンとしてはCaが良好なドープ効果を発現すること。また、Gaサイトに添加するカチオンとしてはMgが良いことを明らかにした。一方、Mgを添加すると格子が膨脹するので、Mgを添加した系ではPrサイトへの添加物としてはSrがCaより良好な添加効果を与えることを明らかにした。次に添加物の組成を最適化したところ、Pr_<0.93>Ca_<0.07>SCa_<0.85>Mg_<0.15>O_3とPr_<0.9>Sr_<0.1>Ga_<0.85>Mg_<0.15>O_3が良好な酸素イオン伝導性を発現することが明らかになった。この2つの材料はP_<02>=1-10^<-21>atmの範囲でほぼ純粋な酸素イオン伝導性を示し、LaGaO_3系という従来の研究で明らかにした高酸素イオン伝導体に匹敵する酸素イオン伝導性を発現することがわかった。そこで、これらの材料を電解質とする固体電解質型燃料電池の発電特性を測定したところ、いずれも1000℃で500mW/cm^2以上の電力を得ることができ、安定な酸素イオン伝導性をを示すことが明らかになった。一方、遷移金属のCo,Ni,Feなどを添加し、酸素イオン伝導性の向上について検討し、FeまたはCoの添加が有効であることを明らかにした。
|