研究概要 |
まず、前年度に続いて、スパッタ法によるTiN薄膜作製に関する研究を継続し、Ti、TiNと異なるターゲットを用いて堆積させた場合の反応機構の違いや、作製における長・短所を明らかにした。次に反応性スパッタリング法により、高品質ZrN薄膜を作製を試みた。スパッタ時の諸パラメーターを最適化した結果、高周波電力50W,基板温度450℃、窒素流量比15%、スパッタガス圧8mTorrの条件下にて、47.8μΩcmの最低抵抗率を示す薄膜が得られることが判明した。しかし、TiNの場合とは異なり、バルク値相当の値の膜は得られなかった。この条件下で極薄い(膜厚5nmまで)ZrN薄膜の作製及び評価を行った結果、X線光電子分光分析からは、最も薄い50nmの薄膜についても、極表面の酸化物層のArエッチングによる除去後は、ZrNの結合状態にあることを確認できた。また、可視光透過スペクトルを調べたところ、膜厚と最大透過率(Tmax)の関係は昨年度調査したTiNと同程度である事が判明した。ただ、膜厚の減少に伴う抵抗率の増加は、TiNよりも多少大きいと認められた。しかし、50nmの膜のシート抵抗が1kΩ/□以下で、抵抗温度係数TCRも200ppm/℃と正の値を示し薄膜の連続性が確認されたことから、従来の金の蒸着膜の物性よりも優良であり、また窒化物の高硬度、化学的高安定性などの長所を考慮すると極めて薄い金属薄膜よりも優れていると言える。従って、透明導電膜への適用が可能性であると考えられる。 更に、研究結果から、スパッタリング諸条件の最適化に留意することにより、極めて薄い膜厚での連続性が確認された。しかし、不適当な条件下では連続・不連続の臨界膜厚は増大すると予想でき、今後は、スパッタ諸条件が初期形成過程(即ち極めて薄い膜)に与える影響についても検討し、スパッタ諸条件と物性及び初期形成過程との関係を明らかにする予定である。
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