研究概要 |
粘土鉱物が静電気的作用により様々な分子やイオンをその層間に取り込む性質に着目し、層間に取り込まれた分子やイオン(ゲスト)が高密度に分布することができれば、これらゲストが二次元的なポテンシャル場において結晶や溶媒中などには認められない特異な配列状態あるいはそれに伴うゲスト間相互作用の発現を期待することができる。 まず、スメクタイト系粘土であるNa-モンモリロナイトを選び、1,10-フェナントロリンを配位子とした種々の希土類(ユーロピウム、テルビウム、プラセオジウム、イッテルビウム、ガドリニウムなど)ビスフェナントロリン錯体を1種類、または2種類同時に粘土層間に吸着した有機-無機複合を作製し、得られた複合体の発光特性を層間における希土類錯体の立体配置や配列状態と関連づけて検討した。その結果、均一な溶媒や結晶では認められない分子間相互作用(エネルギー移動や回遊など)が二次元空間に取り込んだ同種あるいは異種希土類錯体間において認められることが明らかとなった。 次に、この分子間相互作用を詳細に検討するため、層間における希土類錯体の立体配置を粉末X線回折パターンを用いて層間の電子密度分布を計算した。その結果、希土類ビス錯体はある程度乱れた状態で層間に取り込まれているものの、希土類金属元素が粘土表面に吸着しているモデルが示唆された。したがって、このような分子間相互作用は近接した1,10-フェナントロリン配位子を介在して起こっているものと考えた。 今後は、このような分子間相互作用を応用した光あるいは光-磁気機能性材料の創製を試みたい。
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