本研究は構造単位法により多成分系無機多孔体を合成するための手法を確立することを目的とし、本年度は主にこの方法によるSiO_2-TiO_2系多孔体の合成条件について研究を行った。 SiO_2源には二重四環シロキサン(Si_8O_<20>^<8->)構造を持つ(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムシリケート、TiO_2源にはチタンビス(トリエタノールアミネート)を用い、メタノール中室温で反応を行ってゲルを合成した。ゲル化時間は溶液のTi/Si原子比に依存し、この比が1.0溶液のそれが最も短く(約12h)、1.0からずれるにつれてゲル化時間は長くなり、0.01及び2.0の溶液のそれは約10dであった。トリメチルシリル化法により反応を追跡すると、Si_8O_<20>^<8->の構造が保たれたまま反応は進み、ゲルが生成することが確認できた。 Ti/Si比が1.0の溶液から調製したゲルを50℃で乾燥後、空気中650-1000℃で1h焼成すると、白色粉末が得られた。これらのSiO_2成分は非晶質、TiO_2成分はアナターゼとして存在し、1000℃で5h焼成を続けてもアナターゼからルチルへの転移は起きなかった。650及び1000℃での焼成物の比表面積は、各々、496及び127m^2g^<-1>で、吸脱着等温線はBET IV型を示した。以上のことから、この方法により、アナターゼが安定に存在し高耐熱性を示すメソ多孔体が合成可能であるといえる。 Ti/Si比が1.0以外の溶液から調製したゲルからの多孔体の合成も可能であり、650℃で焼成した場合、組成に関わらず350m^2g^<-1>以上の比表面積を示した。平均細孔径はTiO_2含量の増加に伴い大きくなる傾向が認められた。これらの溶液のゲル化時間が長い理由を検討し、その結果、溶液に少量の水を添加して反応を行うと、ゲル化時間を大幅に短縮でき、またこの操作が生成する多孔体の特性にはほとんど影響を与えないことがわかった。
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