熱電変換半導体は熱エネルギーと電気エネルギーを相互変換しうる材料であり、廃熱利用発電や脱フロン電子冷却等への応用が期待されている。中でも、重金属カルコゲナイド化合物は高い変換能力を持つ物質として注目されてきた。しかし、実用的に使用するには、未だ変換効率が不十分であるため、変換効率を向上させるための多くの研究が必要である。変換効率向上の妨げとなっている要因の一つに、素子製造の際のプロセッシング、すなわち焼結体製造プロセスがある。従来は、重金属カルコゲナイドを加圧焼結により焼結させ、これを機械加工して素子に用いていたが、加圧焼結法では、結晶粒子の粒界に微量の酸化物相が残存し、これが効率低下を来していた。 本研究では、のひとつであるセレン化鉛を対象として常圧焼結による焼結体作製とその熱電変換特性の評価を行った。特に、常圧焼結を行う際に必要な、原料の微粒子化、成形操作の最適化、ならびに焼結時に温度・時間・雰囲気条件を明らかにし、なおかつ常圧焼結によると、加圧焼結体で問題となった粒界の酸化物相の除去が可能となることを示すことができた。
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