研究概要 |
本研究では、リチウムが格子間に可逆的に侵入一脱離するような金属間化合物であるMg_2Geについて、メカニカルアロイング(MA)により化合物の形態を変化させることで内部応力を緩和させ、サイクル寿命の低下を抑止する試みを行った。これにより、炭素材料より充・放電容量に勝りサイクル寿命に優れたリチウムイオン二次電池負極材料の創製をめざした。 MA処理10時間毎のX線回折測定の結果、20時間程度のMA処理により比較的結晶性の良いMg_2Geが単一相で得られることがわかった。MA処理時間の増加にともない、回折ピークがブロード化することから、結晶化度の低下あるいはナノ構造化による形態変化が生じていることが予測される。この結果から、MA法がMg_2Geの合成と試料の形態変化の両方に適していることがわかった。 MA処理時間の異なる試料において、電池充放電サイクル数増加にともなう放電容量の変化を調べた。充・放電試験に用いた試験電極は、MA処理試料粉末、導電材、結着材を混練した後、Cuメッシュ1cm^2上に塗布したものである。混合比率は重量比で、MA処理粉末:導電材:結着材=75:20:5とした。電解液は1MLiClO_4/PCで、評価セルには対極と参照極をリチウム板とする3極式セルを用いた。MA処理時間が25,40,80,100時間と長くなるにつれ第1サイクル目の充放電容量が減少することから、MA処理時間の増加にともなう結晶化度の変化が電池容量に大きく影響することがわかった。MA処理40時間の試料に着目すると、MA処理25時間のものと比較してサイクル初期の容量は小さいものの、容量の減少が抑制されており、4サイクル目で逆転することが認められた。したがって、適度なMA処理は電池充放電サイクル寿命の延長に寄与することが見出された。
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