研究概要 |
本年度の研究計画の基づき、以下の諸点に関して研究を行った。 1,トンネル構造を持ったポーラスリン酸ルテニウムの単結晶構造解析 一つの結晶軸方向に平行して走るトンネルをもった、ポーラスリン酸ルテニウムの単結晶合成に成功した。トンネル内にナトリウムイオンと、銀イオンを含む単結晶をそれぞれ得ることができ、4軸単結晶構造解析によって、トンネル径やイオンの配位環境に関する興味ある結果を得ることができた。トンネルの最小内径は、ナトリウムの系で、酸素のイオン半径を引いて約2.2Å程あり、今後のイオン伝導度測定に関して期待が持たれる。また、磁化率の測定を行い、本化合物が室温付近ではCurie-Weiss則に従うが、低温では4価のルテニウムのスピン軌道カップリングの効果によって、有効ボ-ア磁子数が減少することを確認した。 2,新たなポーラスリン酸ルテニウムの合成 リチウムイオンをケージ内に含んだ新しい複合リン酸ルテニウムの合成に成功した。この化合物は、リチウムイオンを含んだケージがジグザグに連結したトンネル構造をとっている。本化合物についてはまだ単相合成ができておらず、現在合成法の検討を行っている。 3,ポーラスリン酸ルテニウムのイオン伝導度の測定 合成が予定よりも順調に進んだ為、平成10年度に実施を計画していたイオン伝導度の測定に着手している。その結果、中間報告ではあるが、1で合成した各リン酸ルテニウムについて、比較的高いイオン伝導度が測定されている。詳細な実験は平成10年度に実施する予定である。 なお、1の結果の一部をまとめて、論文として発表した。
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