研究概要 |
本年度は以下の諸点に関して研究成果を得た。 1、 トンネル内にリチウムイオンを含むポーラスリン酸ルテニウムの単相合成に成功し、粉末法による結晶構造解析を行った。この結果をもとに、昨年度の研究によって明らかにされた銀塩との構造比較を行い、イオンの相違に起因する結晶構造の変化を解明することができた。 2、 本研究で得られた、リチウム、銀、プロトン、及びナトリウム塩のイオン伝導度の測定を行った。インピーダンス法による測定の結果、リチウム塩と、銀塩において比較的高いイオン伝導度が得られ、本系において、イオンが伝導することが確認された。活性化エネルギーは0.40(Li塩),0.43eV(Ag塩)であった。 3、 イオン伝導度の測定結果と、結晶構造解析の結果をあわせて、イオンの違いによる伝導度の変化を構造化学的に考察した。その結果、このリン酸ルテニウムのホスト構造は、トンネル内に内包されるイオンの大きさによらず一定であり、熱的、化学的に非常に安定であること。そのためイオン半径が小さいリチウムイオンの系において、もっとも大きな伝導度が得られたこと等がわかった。 4、 リチウム塩に関しては、ヨウ素によるリチウムの酸化的引き抜きを試みた結果、一部リチウムが抜けた酸化型のリン酸ルテニウムが生成することがわかった。ルテニウムが酸化されたことは磁化率の温度依存性の測定によって確認した。またこの化合物は低温(7K)で反強磁性的な転移を示すことも明らかになった。
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