二重層状銅酸化物La_<2-x>Ba_xSrCu_2O_6(Ba系)は、インターカレーションによってNOを高速に吸収するため、希薄NOの分離回収に利用可能な固体吸収材料への応用が期待される。本研究では、Baを含まない類似化合物La_<2-x>Sr_<1+x>Cu_2O_6(Sr系)を合成し、NOの吸収脱離特性を詳細に調べた。水蒸気処理後のSr系試料(x=0〜2.0)の200℃におけるNO吸収はx>0.5の組成で認められ、x=1.4において最高の吸収初速度に達した。XRD測定によると調製後のx=1.4の試料は、二重層状銅酸化物、SrCuO_2およびSr_2CuO_3の混合物である。水蒸気処理およびNO吸収後、SrCuO_2相の回折強度が変化しないのに対して、二重層状構造に起因する回折強度は著しく減少した。SrCuO_2およびSr_2CUO_3単一相を合成し、NO吸収速度を測定したところ、x=1.4の試料に比べて、低い初速度を示した。以上の結果から、NO吸収に最も有効な結晶相はBa系と同様に二重層状銅酸化物である。FT-IR測定によるとNO吸収後の試料にはNO_2^-が含まれ、その脱離は200℃以上で開始し、Ba系に比べて、約100℃低温で完結した。脱離種としては、NOの他にO_2および微量のNO_2が確認されたが、N_2は全く生成しない。すなわち、Sr系試料のNO吸収脱離は可逆的でBa系が吸収NOを解離的に放出する反応とは異なる機構で進行する。Sr系試料(x=1.4、0.2g)に約50torrの飽和水蒸気を含む1vol%NO/Heを供給しながら、反応温度を250℃および500℃で周期的に変動させた。初サイクルにおいて250℃で供給したNOの90%以上は除去され、500℃で脱離した。2サイクル以降ほぼ一定(0.28mol/mol)の吸収と脱離が可逆的に繰り返された。NO吸収は共存する水蒸気および共存酸素によって同様に促進されるが、CO_2による阻害を受けた。
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