1.今年度の実験計画 本申請で阿はスピネル型フェライトの室温合成反応機構の解明を通じて室温と言う環境負荷が低い条件における機能性材料合成開発に関する基礎情報を蓄積する事を目的とし、本年度はスピネル型フェライトの一種であるマンガン(II)フェライトの室温合成を検討した。マンガンフェライトはこれまで65℃以上での合成報告があったが室温での合成報告はなかった。申請者は反応溶液中の溶存酸素濃度を低くする事によってその合成が可能である事を昨年度見出したが、その詳細な反応機構解明を今年度の課題とした。 2.実験結果 室温と65℃以上でのマンガンフェライト合成反応において、溶存酸素濃度が反応生成物を決定する因子の一つである事を見出した。即ち、反応温度が室温付近(20℃)条件では溶存酸素濃度が高いと水酸化物沈殿の溶解析出反応が抑制され、逆に反応温度が高くなるにつれて溶存酸素濃度が高くても水酸化物沈殿の溶解析出反応は適度に進行する事が分かった。また、マンガンイオン濃度が高くなる程室温で要求される溶存酸素濃度は低下した。また、反応溶液のpHについても反応生成物を決定する因子の一つである事が見出された。また、生成過程の溶液pH観測から、40℃以下の温度ではフェライト生成に伴い、溶液pHの値が上昇する事が分かった。このpH上昇については従来の65℃以上でのフェライト生成反応機構では説明ができない事から、このpH変化の解明が来年度の課題となる。 3.来年度以降は、マンガンフェライト生成過程の固相変化に着目し、固相(沈殿)と溶液中の金属イオン濃度の両方の分析から反応機構の解明を目指す。
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