研究概要 |
1. シリルエノールエーテルの銅(I)塩による選択的アシル化:ケイ素・銅交換反応がシリルエノールエーテル上でも進行することを利用して,シリルエノールエーテルの銅(I)塩による選択的O-アシル化を行ったところ,広範な基質に対して良好な収率で目的物が得られた. 2. 銅(I)触媒によるα,β一不飽和力ルボニル化合物の求核的シリル化:ケイ素求核剤はクロロシランやジシランからアルカリ金属を用いて還元するなどの方法で発生することができるが,炭素求核剤と比べると比較的発生させにくいことからやや敬遠されがちであった.われわれはケイ素-ケイ素結合が銅(I)塩で切断されることを初めて発見し,これを利用して求核的なケイ素化剤を触媒的に発生させる方法を見つけた.1〜10%触媒量のCU(I)OTfの存在下,ジシランがα,β-不飽和カルボニル化合物に1,4-付加反応し,引き続く酸加水分解により,β-シリル化体が高収率で得られることを新たに見いだした.この反応は銅塩に対する配位子の効果が顕著で,銅(I)塩に対して小過剰のトリブチルホスフィンの添加により収率が向上する.また溶媒としてはDMFがもっともよい結果を与える.基質としてはα,β-不飽和アルデヒドも可能であるが,α,β-不飽和エステルの場合は収率が低下する.ジシランのα,β-不飽和ケトンへの1,4-付加反応はPd触媒を用いた報告があるが,ハロゲン置換により活性化されたジシランが必要であるなど制限があり,この銅(I)塩触媒を用いる方法の方が一般性は高い. 3. 光学活性ヒドロシランにおけるケイ素・銅(I)交換:光学活性ヒドロシランにおいて,ケイ素・銅(I)交換反応に基づくシリルエーテル合成を行ったところ,極性溶媒中にもかかわらず,ケイ素上の立体が保持された生成物が得られた.このことはこのケイ素・銅交換反応を経由する反応機構の考察に有益な示唆を与える.
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