研究概要 |
平成9年度では、光学活性スルホキシドをキラル補助基とする分子間ラジカル不斉付加反応に於いて、エナンチオ面選択性に対するルイス酸の効果を検討し、以下の点について明らかにした。 1.シクロペンテノン以外のシクロアルケノン、ラクトンなど他の環系への応用を検討したところ、シクロヘキセノンに対する付加反応においてメシチル置換スルフイニル基の場合、高い立体選択性で付加体が得られ、ルイス酸の有無により完全に面選択性を逆転することができた。またアルコール中ベンゾフェノン存在下、光照射による付加反応においても、メシチル置換スルフィニル基の場合に高エナンチオ選択的に付加体が得られた。 2.アルキル置換α-スルフイニルシクロペンテノンのジアステレオマ-混合物に対してラジカルβ-付加反応を行なったところ、速度論的に分割され、付加体が単一ジアステレオマ-として得られ、原料の片方のジアステレオマ-は回収された。付加体のスルフィニル基を還元脱離することにより、種々の光学活性アルキル置換シクロペンタノン類を得る簡便法を確立した。 3.鎖状α,β-不飽和スルフィニルエノンに対するラジカル付加反応において、ボラン法ではプンメラ-生成物も得られてきた。この反応はボランエノラート経由で起きることから、アルコール類のラジカル付加を光反応によって、行うことにより高立体選択的に付加体を得ることができた。 従来用いられているエステル、イミド等の補助基を用いる方法では、十分な規制は難しい。これに対して我々の提起するかさ高い置換基を有するα-スルフィニルα,β-不飽和カルボニル化合物では、キレーション制御によるコンホメーション規制が強固におこなえるので、高いエナンチオ選択性が発現した。これら選択性発現に関するコンホ-メーション解析をNMR,X線解析等により検討し、ラジカル反応における立体制御法に関する知見を得た。
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