研究概要 |
光学活性スルホキシドをキラル補助基とする分子間ラジカル付加反応に於ける立体制御について、以下の点を明らかにした。(1)種々のシクロアルケノンへの応用を検討し、メシチル置換スルフィニル基の場合に高立体選択的に付加体が得られ、ルイス酸の有無により完全に面選択性を逆転することができた。(2)アルキル置換α-スルフィニルシクロペンテノンのジアステレオマー混合物に対してラジカルβ-付加反応を行なったところ、速度論的に分離され、付加体が単一ジアステレオマーとして得られ、原料の片方のジアステレオマーは回収された。付加体のスルフィニル基を還元脱離し、種々の光学活性置換シクロペンタノン類を得る簡便法を確立した。(3)銀状α,β-不飽和スルフィニルエノンに対するラジカル付加反応において、ボラン法ではプンメラー生成物も得られてきた。アルコール、アセタール類のラジカル付加を光反応によって行と、高立体選択的に付加体が得られた(4)高エナンチオ選択性の発現に関するコンホメーション解析をNMR,X線解析等により検討し、ラジカル反応における立体制御法に関する知見を得た。(5)13-ヒドロキシビニルスルホキシドへのラジカル付加-水素化反応では、分子内水素結合によるスルフィニル酸素の識別により、立体選択性および個々のジアステレオマーの反応性が全く異なることを見いだした。(6)アキラルなスルホニル化合物のエナンチオトピックな酸素原子を水素結合またはルイス酸によって識別し、キレーション形成させることによって、反応性および立体選択性を制御することを目的として、ルイス酸存在下でのβ-ヒドロキシスルホンへのラジカル付加-補足反応を検討したところ、高いジアステレオ選択性が発現した。以上、エナンチオ選択的ラジカル反応におけるスルフィニル基及びスルホニル基の立体効果とルイス酸によるキレーション制御法を明らかにした。
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