研究概要 |
本研究課題では、新規光学活性界面活性剤を合成したのち、この新規光学活性界面活性剤の電解反応系への添加による生成物分布、特に光学収率の変化について検討する。今年度は新規光学活性界面活性剤の合成およびそれを添加した有機電解反応の予備実験を行った。 1.新規光学界面活性剤の合成 3系統の新規4級アンモニウム型光学界面活性剤を合成した。1つ目は、アミノ酸のフェニルアラニンとウラリルアミンとをアミド結合させたのちアミノ基をトリメチル化して得た。2つ目は、プロリノールのアミンをアルキル化(ラウリル、セチル)したのち、メチル化して得た。3つ目は、窒素原子上に不斉中心を持つもので、窒素原子上にラウリル基、イソプロピル基、メチル基と他の基(ベンジル、フェニルエチル)を持つものを合成した。前者2系統の界面活性剤については出発原料に一方の光学異性体を用いることにより光学活性な界面活性剤を得た。3つ目の界面活性剤はラセミ体として得られるため、今後光学分割は必要である。 2.有機電解反応 有機電解反応系には、4級アンモニウム型界面活性剤の添加によって生成物分布が変化するアセトフェノンの電解還元反応を選んだ。この電解還元による生成物1-フェニルエタノール(Pe)と2,3-ジフェニル-2,3-ジヒドロキシブタン(Db)には、ともに光学異性体が存在する。予備実験として新規界面活性剤を添加したところ、PeとDbの生成比が変化し、これら界面活性剤はこの電解還元反応系に対して何らかの作用があることが判った。光学収率については、光学分割カラムに適した反応後処理の確立後検討する。
|