研究概要 |
1.アルコキシジホウ素化合物の共役ジエン類への1,4-付加が、触媒量の白金錯体の存在下で効率的かつ立体選択的に進行し、対応する(Z)-1,4-ビス(ボリル)-2-アルケン類を収率良く与えることを見いだした。触媒および溶媒の性質は反応に大きな影響を与え、ゼロ価白金錯体であるPt(PPh_3)_4と非極性溶媒であるトルエンの組み合わせが最も良い結果を与えた。 2.ジホウ素化合物としては、入手容易で取り扱いやすいピナコールエステル誘導体の利用が可能である。またこの場合、生成物である(Z)-1,4-ビス(ボリル)-2-アルケン類も空気中で安定に取り扱うことが可能であり、単離・精製が容易に行える。以上のことは、本反応が簡便な実験操作で行えることを意味しており、一般的な有機合成反応としての使用に充分耐えられることを示している。 3.基質である共役ジエン類の適用範囲は広く、無置換型、鎖状の末端および内部置換型、また環状のいずれの反応も問題なく進行し、様々な置換様式の(Z)-1,4-ビス(ボリル)-2-アルケン類を与えた。また本反応は官能基選択性にも優れており、例えば孤立した炭素-炭素二重結合を有するトリエン類の反応でも、付加は共役ジエン部分でのみ進行する。 4.ジシランやジスタナンの反応と同様、反応機構はジホウ素化合物のゼロ価白金錯体への酸化付加、共役ジエンのホウ素-白金結合への挿入、および(Z)-1,4-ビス(ボリル)-2-アルケンの還元脱離を含むものと考えている。最初のステップである酸化付加に関しては、ジホウ素化合物とゼロ価白金錯体との反応によりビス(ボリル)白金錯体が生成することから確証が得られており、またこの錯体が共役ジエンと反応して(Z)-1,4-ビス(ボリル)-2-アルケンを与えることも確認できた。これらの結果は、本反応が上記機構を経由して進行することを強く示唆している。
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