研究概要 |
3位に脱離基を有する3、3-二置換プロビン類に種々の塩基を作用させプロパジエニリデンカルベン(またはカルベノイド)を調製し、これに単体硫黄を作用させることにより活性科学種プロパジエンチオンの発生が可能と考え検討を行った。その結果、種々の1,1-二置換プロパルギルメチルエーテル類に対し2級アミン共存下、ブチルリチウム、単体硫黄を順次作用させることにより、α,β-不飽和チオアミドが良好な収率で得られることが分かった。同様に、単体セレンを用いた場合α,β-不飽和セレノアミドが得られた。これらの生成物はプロパジエンカルコゲノンの補足生成物である考えられる。しかしながら2級アミン非共存下の反応では構造決定可能な化合物は得られずヘテロクムレン類発生の直接確認はできなかった。1,1-ジ(4-メトキシフェニル)プロパルギルメチルエーテルを基質として用いた場合にのみ、プロパジエンチオンの2量体がさらにいくつかの硫黄原子を取り込んだと考えられる化合物が微量ながら得られたが完全な構造決定には至らなかった。一方、臭化ベンジルを系中に共存させ反応を行った場合にはアルキニルベンジルスルフィドが得られ、系中でのアルキニルチオラートの存在が支持された。さらに、このチオラートは反応するα-リチオチオケテンと平衡にあると考えられる。しかしながらα,β-不飽和チオアミド生成反応において、α-リチオチオケテンからのMeOLiとアミンの求核攻撃のいずれが先行するか解明することはできなかった。今後は、プロパジエニリデンカルベン(またはカルベノイド)前駆体として1-ブロム-3,3-ジフェニルアレンを用い同様の検討を行う。この反応系においてはLiBrの脱離に起こりさらにチオイノラートからα-リチオチオケテンへの異性化も伴わない。したがってプロパジエンチオンの直接観測またはその二次生成物の単利が可能と考えられる。
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