研究概要 |
本年度は軸性キラリティーを有するポルフイリン二量体の合成を中心に研究を行った。特に二つの亜鉛ポルフィリンの間に光学活性なビナフチル誘導体をスペーサーとして用い、ポルフィリン環が囲む空間を不斉場としてゲスト分子が挿入されるように分子設計を行った。合成についてはこれまで本研究者が行ってきた多段階ポルフィリン合成手法を駆使して簡便な合成スキームを選択し、目的とするビスポルフィリンホスト分子を収率良く得ることが可能となった。得られたポルフィリンの2つのエナンチオマーは光学活性カラムを備えたHPLCによって、容易に分離でき、CDスペクトルにより純度を確認した。それぞれのビスポルフィリンホスト分子のエナンチオマーに対する様々なジアミンの相互作用を観測し、電子スペクトルからジアミンに対する親和性の熱力学的考察を行った。さらに二次元NMR(Phase-sensitive ROESY)とCDスペクトルから構造的検討を加え、適当な鎖長のα,ω-ジアミン(n一オクチルアミン)に対してビスポルフィリン亜鉛錯体が特異的にダイトッピクな相互作用をしていることが示された。一方、光学活性なジアミン(リジン誘導体)に対して不斉認識選択性を示すこと、およびスペーサーのビナフチル基の代わりにビフェニル基を導入するとホスト分子に対する不斉誘導の挙動も最近観測された。不斉認識及び不斉誘導については次年度さらに詳細に検討する予定である。以上、軸性キラリティーを有するポルフィリン二量体は3次元的にユニークな認識場を提供し、スペクトル的に特徴的な物理変化を示すため、ホスト分子として極めて有効な化合物であることが明らかになった。
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