研究概要 |
連続する不斉炭素合成ブロックとして用いるイソオキサゾリン環の立体選択的合成を目的として、この複素環を与えるο-シリルニトロナ-ト1,3-双極子前駆体β-ニトロアルコールは、ニトロアルドール反応によってほぼ定量的に得られた。このβ-ニトロアルコール体の2種類の酸素(水酸基酸素とニトロ基酸素)の選択的官能基化によって、2種類のο-シリルニトロナ-トの合成を計画し検討を行った。 1)水酸基酸素の選択的官能基化 水酸基のエステル化(またはシリル化)反応は、水酸基酸素と1,3-位のニトロ基酸素によるカルボニル炭素(またはシラン原子)への求核攻撃により、容易に転位が起こるため水酸基酸素置換体は不安定で単離には至っていない。また、水酸基のベンジル化には、β-ニトロアルコール体が安定な6員環キレート錯体を形成するためか求核性は低く未反応に終わった。以上のように水酸基酸素の選択的官能基化については現在も検討中である。 2)ニトロ基酸素の官能基化による環状1,3-双極子の合成 ジクロロジメチルシランと2当量の塩基を用いて6員環ο-シリルニトロナ-ト1,3-双極子の合成を行った。種々の条件検討の結果、塩基にトリエチルアミンを用い、塩化メチレン溶媒中、12時間環流することで、目的とする環状ο-シリルニトロナ-トの合成に成功した。この双極子と種々のアルケンとの環状付加反応による2-イソオキサゾリン環合成を検討した結果、この双極子の反応性は低く、アクリル酸メチル、メチルビニルケトンなど電子不足型アルケンとの反応でのみ環状付加体を与えた。今後、シリル上置換基の変更により双極子の電子密度を変え反応性を改良し、環状付加反応での立体選択性のついて検討していく予定である。
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