研究概要 |
ニトロアルドール反応によって合成した水酸基α位に不斉中心を有するβ-ニトロアルコール1を1,3-双極子前駆体に用い、分子内および分子間双極性環状付加反応の2つの方法論で反応性およびジアステレオ性について研究を行った。初めに、1の塩基処理で発生させたα-ヒドロキシニトロナート2と系中で調製した二塩化二(2-プロペノキシ)シランとの反応で分子内にO-シリルニトロナート双極子と親双極子を持つ分子内反応型基質を合成した。不安定なため単離精製することなく続けて還流条件下で分子内環状付加反応を試みたが未反応であった。次に、2の水酸基酸素とニトロナート酸素とをシリル、カルボニル、又はアセタールで架橋し、環状O-置換ニトロナート双極子の調製を行い単離精製をすることなく続いて、種々の親双極子を加え反応性について検討を行った。その結果、シリルで架橋したO-シリルニトロナート3と一置換電子不足型アルケン親双極子の場合のみ、対応する環状付加体が得られた。よりLUMOレベルの低い1,2-二置換電子不足型アルケン親双極子と3とは反応しなかった。このことより、この双極子3は、親双極子の立体効果に強く影響されることが分かった。双極子3の不斉中心置換基が2級炭素鎖の場合、アクリル酸メチルおよびアクリロニトリルとの反応による環状付加体のジアステレオ異性体比はほぼ1:1 (収率55%)であった。対して、4級炭素鎖の場合、アクリル酸メチルとの反応はジアステレオ異性体比85:15で1,4-不斉誘導された対応する環状付加体(19%収率)を与えた。一方、3のシリル上置換基をより嵩高くしてもジアステレオ選択性には殆ど影響は認められなかった。
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