研究概要 |
ポリエーテル化合物の中に極めて高い生理・薬理活性を示す化合物やイオノフォアとしての機能を示す化合物が見いだされ、ポリエーテル化合物は天然合成化学のターゲット分子としてのみならず機能性分子としての利用にも興味が持たれている。それらポリエーテル化合物の合成においては、それらの環状エーテル部の立体化学をいかに制御しながら、効率良く構築するかが大きな課題である。 そこで申請者は環状エーテル化合物の立体選択的合成法の開発を目的とし、まずテトラヒドロフラン環構造に着目し、多置換テトラヒドロフラン誘導体のシステマテックかつ高効率的合成法の開発をめざし研究を行った。その結果、ルイス酸存在下、2、5位に置換基を有する環状ヘミケタールとトリメチルシリルシアニド、エノールシリ-ルエーテル、ジアルキル亜鉛、アルコール、チオール等の求核剤との反応が高収率かつ高い立体選択性で進行し、本手法が2,2,5-三置換テトラヒドロフラン誘導体の立体選択的合成法としての利用可能であることを見いだした。またこの反応においては用いるルイス酸の種類により反応性に著しい差異が認められた。そこで用いるルイス酸の反応性に及ぼす効果を知る目的で低温でのNMR測定を行ったところ、用いるルイス酸の種類により反応中間体の構造に著しい差異が認められ、それら環状ヘミケタールとルイス酸から生成する中間体の構造の差異が反応性に大きな影響を与えていることが示唆された。
|