本研究代表者は微細な表面形状の作製法として両親媒性化合物のキャストフィルム形成過程で出現する散逸構造の固定化によりマイクロメータースケールのハニカムパターンの導入に成功している。一方、細胞外マトリックスの化学的、構造的変化による細胞機能の調節に関連し、人工基質上でマイクロパターン化された細胞接着ドメインによる細胞機能の制御が報告されている。本研究代表者はこれに着目し、メゾスコピックパターン化フィルムの生体適合性材料としての可能性を調べることを目的に研究課題「自己組織性多糖のメゾスコピックパタ-ニング」を遂行している。今年度は、表面形状としてハニカムパターンを有する糖質ポリマーキャストフィルムの作製とその構造評価をおこなった。その成果を以下に列挙する。 1.両親媒性ポリマーとして2種類のビニルポリマー誘導体を新規に合成した。アニオン性多糖とジメチルジヘキサデシルアンモニウムからなるポリイオンコンプレックスを調製した。 2.両親媒性ポリマー、ポリイオンコンプレックスの希薄溶液を固体基板上に塗布し、高湿度下で乾燥させることでキャストフィルムを作製した。キャストフィルムの表面形状を光学顕微鏡および原子間力顕微鏡を用いて観察した。いずれのポリマーからもハニカムフィルムが得られた。ハニカムの穴の直径は3μmから5μmであった。原子間力顕微鏡を用いたハニカムフィルムの表面トポグラフィー観察からは、ハニカムパターンの部分の高さ、幅が共に数百マイクロメーターのサイズを有すること、パターンで囲まれた穴の部分には基板が露出しているか、あるいはその一部分が数nm程度のポリマーの薄膜で覆われていることを明らかとした。
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