研究概要 |
ポリジエン類のガラス転移温度はミクロ構造により多少の差はあるものの、室温以下にあるため、これらのポリマーに例えばカルボキシル基や水酸基のような極性官能基を効率よく導入できれば、低温特性に優れた新規機能性材料として利用出来る可能性がある。本研究ではカルボキシル基あるいは3個の水酸基を同時に保護できるオルトエステル基を有する1,3-ジエン類を合成し、その重合挙動を検討した。 2-位のカルボキシル基をトリエトキシメチル基で保護した2-トリエトキシメチル-1,3-ブタジエンはラジカル重合により1,4-E構造(主鎖に着目するならばシス-1,4構造)を95%程度含むポリマーを与える。このポリマーはほとんどの有機溶媒に可溶であるが、希塩酸で処理すると瞬時にカルボン酸エステルヘと変換され、室温で粘稠なポリマーが得られた。このポリマーは対応するモノマーが不安定で単離できないため、本研究の方法で初めて合成されたポリマーである。また、アニオン重合も試みたが、現時点ではポリマーは得られていない。 分子内の3個の水酸基をビシクロ環状オルトエステル保護した4-(2-メチレン-3-ブテニル)-1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタンのアニオン重合を行ったところ、THF中、-78°Cで重合を行っても分子量分布はやや広いが80%程度の1,4-構造を含むポリマーが得られた。同条件下でジブチルマグネシウムの存在下で重合を行うと、分子量分布は狭くなるがミクロ構造も3,4-構造主体のものへと変化した。脱保護はTHF中希塩酸、ついでメタノールNaOHで処理することにより定量的に進行し、親水性のポリジエンを得ることができた。単独重合体、ブロック共重合体のDSC測定により、これらの熱的特性の解析を行っている。
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