研究概要 |
パラジウム錯体を用いる炭素-窒素結合生成反応を二官能性のジハロゲン化アリールとジアミンをモノマーとする重縮合反応に応用し、新しい縮合系ポリアミンの生成反応について検討した。まず、遷移金属錯体触媒種、配位子、塩基、重合溶媒や温度等の重合諸条件を変えて重合を行い、得られたポリマーの収率・分子量等を比較することによりこの重合反応の最適条件を調べた。その結果、ゼロ価のパラジウム錯体を触媒として用い、立体的にかさ高い配位子を選択することにより、種々の縮合系ポリアミンが高収率・高分子量で得られることがわかった。また、各種ジハロゲン化芳香族化合物と脂肪族及び芳香族2級ジアミン化合物をモノマーとして用いて重合を行い、種々のポリアミンを合成した。そして、各ポリマーの収率や分子量の比較から、モノマーの電子的効果や立体効果が重合触媒サイクルに与えられる影響を明らかにできた。 上記の知見を基に、ジアミンモノマーとして1,3-フェニレンジアミンを選択すると、生成するポリアミンの収率、分子量に向上が見られた。これはモノマーの構造上、重合触媒サイクルにおける副反応であるβ-水素脱離が起こらず、求核性の高い1級アミノ基を有するためと考察した。さらにこの重合法では1級アミノ基と2級アミノ基の反応性に差があるために、既報のウルマン反応で見られるような架橋反応が起こらず、溶解性の高いポリ(m-アニリン)及びその誘導体が合成可能となった。 尚、設備備品として購入した低温恒温水槽は重合における重合温度の制御に、真空ポンプはモノマーの昇華精製及び生成物の乾燥にそれぞれ用いた。
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