研究概要 |
近年、側鎖糖残基を機能素子とする高分子(グライコポリマー)に関する研究が広範に行われている。しかし、ブロック共重合体のように、セグメント単位でのモノマー連鎖配列が制御されたグライコポリマーの合成例はごく限られており、分子構造と機能との相関は未だ明らかではない。本科学研究費補助金による平成10年度の研究では、WGAレクチンを特異的に認識するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を側鎖に有するホモポリマーならびにブロック共重合体を精密合成すると共に、分子構造(モノマー連鎖配列)とレクチン認識能との相関について検討し、以下の成果を得た。 1. 水酸基とアミノ基を保護したグルコサミン含有ビニルエーテル(VE)を新たに設計し、CH_3CH(OiC_4H_9)OCOCF_3/EtAlCl_2/1,4-dioxane系開始剤を用いてリビングカチオン重合させることに成功した。生成ポリマーの脱保護基反応とN-アセチル化により、側鎖にGlcNAc残基を有する単分散グライコポリマーが合成可能であることを示した。さらに、イソブチルVE(IBVE)をコモノマーとするリビングブロック共重合により、重合度や組成比を異にするGlcNAc残基含有両親媒性ブロック共重合体が幅広く設計出来ることを明らかにした。 2. GlcNAc残基含有ブロック共重合体における分子構造の相違がWGAレクチンとの相互作用に及ぼす影響について検討した。その結果、ポリマーのWGAレクチン認識能はGlcNAc単糖ならびにそのオリゴマーに比べ数百倍高いこと、さらに、疎水性IBVEセグメントを導入したブロック共重合体が、GlcNAc含有ホモポリマーに比してより高い認識能力を示すことを明らかにした。また、ブロック共重合体におけるレクチン認識には、最適な組成比が存在することが示唆され、糖鎖高分子の機能発現におけるセグメント単位でのモノマー配列制御の重要性を実験的に示した。
|