本研究では、分子認識機能を有するタンパク質であるモノクローナル抗体をターゲットとし、その特定部位に光機能性非天然アミノ酸を導入し、分子認識機能と種々の光機能を合わせ持つ新しい機能性高分子の合成を目的としている。 まず、ラクダ抗体の抗原結合ドメインをコードした遺伝子を作製した。これは8本のオリゴヌクレオチドをPCR法を用いて順次連結させ、最終的に発現ベクターへクローニングした。ジデオキシ法により塩基配列の決定を行ったところ、設計どおりの遺伝子が合成されたことが確認された。 これを鋳型としT7RNAポリメラーゼによりmRNAを合成を行った。合成法の最適化を行った結果、これまでに合成されたストレプトアビジンmRNAと同程度の合成量が確認できた。得られたmRNAを大腸菌のin vitroタンパク質合成系へ加え、モノクローナル抗体の合成を行った。反応液中のタンパク質を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法およびウエスタンブロット法により分析した。その結果、予想される分子量13kDa付近に合成されたタンパク質が確認された。この結果より目的のモノクローナル抗体の合成が確認された。 また、非天然アミノ酸ニトロフェニルアラニンで化学的にアミノアシル化されアンチコドンにCCCGを持ったtRNAを作製した。一方、拡張遺伝コードCGGGを導入した抗体の遺伝子を作製し、mRNAを合成した。これらを上記in vitroタンパク質合成系に加えることで、抗体の特定部位へ非天然アミノ酸の導入を試みた。ウエスタンブロット法による分析から、目的の非天然アミノ酸の導入されたモノクローナル抗体が合成されていることが確認された。今後、合成したタンパク質の抗原認識機能の検討、さらにアゾベンゼンやピレンナドを側鎖に持った非天然アミノ酸のモノクローナル抗体への導入を進める。
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