研究概要 |
多相交流温度波およびパルス温度波印加による交流温度波熱分析法をフーリエ変換を用いて複数の周波数で同時に熱物性測定可能な装置として発展させ、交流温度波による周波数依存型熱分析の提案および高分子の成形加工過程の解析における周波数測定の優位性を考察するとともに、紙等の多孔性材料への応用についても検討した。 1. 本検討の遂行にあたり下記の測定技術を導入した. (1) 初年度の研究遂行の結果可能となった比熱同時測定の精度をより向上させるため、交流温度波の入力振幅を計測するためのデジタル・マルチメータ(HP34401A)を設備備品として導入した。 (2) 温度制御に関わるノイズの低減化のため、非接触式の集光型温度制御装置やブリッジ回路の試作検証を行い、これらの方法がノイズの低減化には有効であることを確認した。 2. 得られた成果を下記に示す. (1) ポリスチレン、ポリエチレンなど代表的な高分子材料のガラス転移あるいは融解・結晶化に本測定法を応用し、熱物性値の変化を温度・周波数の関数として同時測定することに成功し、特にガラス転移においては周波数分散が明瞭に認められた。(論文1にて発表) (2) 本測定法の特徴は薄膜の測定に適するものであるが、この方法を機能性紙を含む紙材料に適用したところ多孔体であるにもかかわらず、熱拡散率、熱伝導率の精度よい測定が可能であった。本測定法は広範な材料について詳細な熱物性を与える手段として有効であることが示された。(論文2にて発表) 3. 上記成果により,交流温度波またはパルス温度波の伝搬解析から同時に複数の周波数における高精度な熱物性測定の可能性が示された。これは断熱材のような熱物性に関する材料の設計への応用のみならず、高分子基礎物理学においても新たな知見を与えるものであると考えられる。
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