結晶性高分子同士のブレンドは、非晶性高分子同士や結晶性高分子と非晶性高分子のブレンドと比較して、非常に複雑な構造形成が起こることが予想される。本研究は、このような複雑な現象を秩序立てて理解することを目的とする。特に、結晶性高分子同士のブレンドでのみ起こり得る、共結晶化現象に注目する。 本研究ではd-3-ヒドロキシ酪酸(HB)ホモポリマー(PHB)、及び、HBとd-3-ヒドロキシ吉草酸(HV)共重合体のブレンドを解析した。その結果、非晶相の相溶性も、相溶性→非相溶性と変化することがわかった。結晶相構造は、ブレンド中の共重合体のHV組成比が大きくなるにつれて、また、結晶化温度が低くなるにつれて、共結晶化相のみ→両成分の結晶相と共結晶化相の三相が共存→両成分の結晶相の二相が共存、と変化する。この時、共結晶化相はブレンド組成より多くのPHBを含む。また、三結晶相が形成される場合には、まず、PHB結晶相と共結晶化相が同時に生成、成長し、共重合体は、既に形成された結晶相に妨げられながら、融点の低い不完全な結晶相を遅れて形成することもわかった。これらのことは、共結晶相の形成は結晶化の速いPHBの結晶化に共重合体が巻き込まれる結果として起こるを示している。以上のことより、共結晶化の条件としては、ブレンド成分の相溶性が高いこと、ブレンド成分の結晶化速度が大きくて、互いに近いことが必要であることが結論出来る。
|