高分子鎖のコンホメーションが2次元平面内に束縛され2次元高分子ブレンドの相溶性は、バルク(3次元系)とは大きく異なると考えられが、相分離機構、構造形成等を含めて不明な点が多い。本研究は、高分子2成分系水面単分子膜およびLangmuir-Blodgett(LB)膜を対象としてこの問題を明らかにすることを目的としている。本年度は、側鎖にアルキル基およびベンジル基を有するポリグルタメート誘導体(PG)をNCA法により合成した後、ポリイソブチルビニルエーテル(PBVE)との混合水面単分子膜を調製し、水面膜形成挙動を調べるとともに原子間力顕微鏡および電子顕微鏡観察によりその2次元相分離構造を詳しく検討した。主な結果を下記に記す。 1.ブレンド組成を変えて表面圧-面積等温線を測定した結果、いずれのPG誘導体の場合も、占有面積はブレンド組成とともに直線的に変化した(加成性の成立)。この結果は、両者が非相溶であることを示唆する。 2.ベンジル基を有するPGの場合、PBVEマトリツクス中にひも状の相分離構造が観察された。これは、予期したように、本PG誘導体がヘリックスを形成することにより水面上で棒状形態をとり、その形態異方性が反映されたものと結論した。事実、展開溶媒にトリフルオロ酢酸を添加しPG誘導体をランダムコイル化した場合には、相分離構造はひも状ではなく異方性のない円形ドメインとなることを確認した。 3.ベンジル基を有するPG誘導体の場合とは異なり、アルキル側鎖を有するPG誘導体では、いずれも円形ドメインが観察とれた。これは、分子量が十分に大きくないためか、あるいは、ヘリック含量が低いために、分子鎖の形態異方性が十分大きくなかったためと考えられる。
|