研究概要 |
本研究では、重合度・重合位置を制御したオリゴチオフェンおよびそれらを側鎖に有する新規高分子を研究対象として、それらの光・電子物性の解明と機能性材料への応用を検討した。 (1)オリゴチオフェンのヨウ素酸化によって得られる塩の導電性 オリゴチオフェンの分子構造と導電性との相関を明らかにすることを目的として、末端チオフェン環のα位をエチル基でキャップしたチオフェン3,4,および5量体のヨウ素蒸気による化学酸化を行い、得られる粉末の構造、電導度を検討した。得られた暗褐色粉末は、各種スペクトルより、I_3^-およびI_5^-を含むオリゴチオフェンのラジカルカチオン塩であることを同定した。その結果、オリゴチオフェンの鎖長の増加に従って、得られた塩の電導度は高くなり、チオフェン5量体の室温電導度は、4x10^<-4>Scm^<-1>であることがわかった。 (2)オリゴチオフェンを側鎖に有する新規高分子の合成とエレクトロクロミック特性の検討 われわれは、これまでに、チオフェン3量体および4量体を側鎖に有する新規ビニル高分子を設計・合成し、これらが優れたエレクトロクロミック材料として機能することを見いだしている。本研究では、さらに鎖長の長いオリゴチオフェン(5量体、6量体)を側鎖に有する新規ビニル高分子およびチオフェン3量体を有する新規メタクリレート高分子を合成し、それらのエレクトロクロミック特性を検討した。その結果、合成した新規高分子は、電気化学的ド-ピング・脱ド-ピングにより鮮明な色彩変化を示すことを見いだした。また、極性部位を有するメタクリレート高分子のほうが、ビニル高分子に比べ、色彩変化の応答時間が向上していることを明らかにした。
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