本研究は、重合度・重合位置など構造を制御した新規オリゴチオフェンおよびそれらを側鎖に有する新規高分子を設計・合成し、それらの光電物性、電気化学的特性ならびに導電性をπ電子共役系の長さと相関させて解明し、光電変換材料、エレクトロクロミック材料へ応用することを目的としている。本年度は、オリゴチオフェンの共役鎖長と電導度との相関を明らかにすることを目指して、これまで研究の行われていなかった電気化学的手法に基づく塩の調製とそれらの導電性を検討した。鎖長の異なるオリゴチオフェンとしてチオフェン4〜7量体および12量体について検討を行った。 各種スペクトルおよび元素分析より、チオフェン4、6、7量体を電解酸化して得られた塩は、ラジカルカチオンのsimple salt(オリゴチオフェンと対アニオンの組成比が1:1)、チオフェン5量体の塩は、ラジカルカチオンのcomplex salt(組成比が2:l)であり、チオフェン12量体の塩は、オリゴチオフェンと対アニオンの組成比が1:2であることを同定した。チオフェン12量体の塩の電導度は、約10Scm^<-1>であり、本研究で検討したオリゴチオフェンの中で最も高い値を示した。チオフェン4、5、6、7量体から12量体へ鎖長が伸びることにより、その塩がラジカルカチオン塩から2電子酸化された塩に変わること、および電導度が3〜8桁も高くなるという興味深い結果が得られた。
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