本研究では、高分子材料に立体規則性を付与する精密合成法を確立し、高分子の立体構造、結晶性、自己組織性等のナノ構造を制御し、ナノ構造が高分子の電気的・光学的特性に及ぼす影響について明らかにすることを目的にした。また、立体規則性高分子をLangmuir-Blodgett法により薄膜形成し、2次元及び3次元の高組織体を構築し、高次構造と諸性質の関係を明らかにするために研究を行った。その結果以下の結論を得た。 1 立体規則性を有する高分子材料の精密合成法の確立:ポリ(3-アルキルチオフェン)(ヘキシル、デシル、オクタデシル)の結合状態を制御した100%Head-to-Tail型の高分子材料を得る精密合成法を確立した。 2 光学活性基を導入した高分子材料の確立:上記方法で重合法を確立し、さらにその置換基に光学活性基(2-((S)-2-メチルブトキシ)エチル基)を導入した立体規則性高分子材料を合成した。 3 薄膜化と構造制御:得られた高分子材料の薄膜化をLangmuir-Blodgett法やSelf-Assembly法を用いて行い、膜の高次構造を解析し、薄膜形成法により生起する構造制御の形態を明らかにした。また、薄膜中における立体規則性高分子材料が示す自己組織性についてX線回折法等を用いて解析した。 4 高組織体の機能発現の評価:得られた2次及び3次の高組織体の電気的・光学的な特性を評価することで、組織体から発現される新たな機能を見出し、ナノ構造と機能の関係を明らかにした。特に、薄膜の導電性、3次非線形性と構造の関係を検討した。
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