本研究では、高分子材料に立体規則性を付与する精密合成法を確立し、高分子の立体構造、結晶性、自己組織性等のナノ構造を制御し、ナノ構造が高分子の電気的・光学的特性に及ぼす影響について明らかにすることを目的に研究を行った。その結果、本研究によって具体的に以下の項目が明らかになった。 1) 高組織体の機能評価 初年度で得られた各種の立体規則性を有するポリチオフェン誘導体をLangmuir-Blodgett法により超薄膜化した。電気特性として、導電率、光導電性の測定を行い、高組織化が導電率を100倍程度向上させることが分かった。また、光学的特性として3次の非線形光学効果の測定を行い、導電率と同様に高組織化がポリマーの有効共役長を増大させ、その結果として非線形感受率の向上をもたらすことが分かった。 2) 超格子構造と量子サイズ効果の評価 初年度で得られた各種の立体規則性を有するポリチオフェン誘導体と各種導電性高分子をLangmuir-Blodgett法やSelf-Assembly法により交互積層し、人工的な超格子構造を実現した。本手法を用いれば高分子半導体を用いて超格子構造を形成することが可能になったが、現在のところ量子サイズ効果の確認には至っていない。 3) 光学活性基導入の影響 立体規則性を有する高分子に光学活性基を導入し、構造と特性に対する効果を調べた。その結果、電気的、光学的特性には影響を与えないが、構造と温度特性に大きな影響を与えることが明らかになった。
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