研究概要 |
日本欧加の共同事業である宇宙ステーション計画フリーダムは1998年に有人オペレーションが予定されている。宇宙空間という新しい実験室を初めて人類に半恒久的に与えてくれるフリーダムは、過去のスペースラブと比べて遙かに高精度で質の高い実験データを与えてくれるはずである。しかし,同時に我々は,工学的見地から宇宙基地が地球の磁気圏と電離層に与える影響や宇宙基地が受ける電磁的影響を正しく理解しなければならない。本研究の目的は帯電した宇宙飛翔体と宇宙プラズマとの干渉現象を粒子シミュレーションにより明らかにすることである。本研究では帯電した宇宙飛翔体がどのように宇宙プラズマから還流電流を得るかを,特に,宇宙飛翔体自体が内部から洩れでるアウトガスが大きな人工プラズマ源になることを着目してシミュレーションモデルを構成した。本モデルでは正準モーメンタム保存則を利用して一次元的なアウトガスの挙動を解析的に平衡状態で求めた。この解析によると,アウトガスは宇宙空間に放出された瞬間に宇宙プラズマとの電荷交換により宇宙飛翔体と同期して動くプラズマビームとなる。このビームは同時に,磁場により,進行方向と垂直な方向に分極電場を作り,飛翔体と同期して動こうとする。分極後,このビームは一次元的に安定であることを不安定性解析と一次元シミュレーションによって確かめた。さらにこの一次元モデルを使って,2次元以上の粒子シミュレーションをスタートさせる初期化コードを完成させた。さらにこの初期化コードを使って二次元の粒子シミュレーションをスタートさせ,ビームの減速がケルビン・ヘルムホルツ不安定によって起こることを確かめた。また,これらのプラズマがなかりの時間飛翔体を取り巻き,飛翔体の帯電現象と密接な関わりを持つことを明らかにした。これらの結果は,Physics of Fluids,Journal of Comutational Physicsなどの学会誌に投稿され,受理されている。
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