研究概要 |
航空宇宙用先進複合材料であるCFRP積層板(積層構成はクロスプライ積層板とした)に熱サイクルを負荷し,その後引張試験を行い,破壊プロセスの観察を行った.また,トランスバースクラック密度を測定し,得られた結果とトランスバースクラック発生後のクロスプライ積層板の2次元近似弾性解析をトランスバースクラック密度予測に用いた結果と比較した. 熱サイクル試験は最高温度150℃と最低温度-70℃の間で100回までの熱サイクルを負荷した.温度変化は10℃/minで最高温度と最低温度でそれぞれ5分間の温度一定時間を設けた.今回の熱サイクル条件では熱サイクルのみによるトランスバースクラックなどの損傷は見られなかった.熱サイクル負荷後,室温において準静的引張試験を行い,レプリカ法を用いた積層板の破壊プロセスの観察を行い,損傷進展プロセスに及ぼす熱サイクルの影響を検討した. その結果,熱サイクル数50回を境に異なった現象が見られた.すなわち,熱サイクル数0回から50回では,トランスバースクラック発生ひずみが次第に大きくなり,トランスバースクラック密度は小さくなる傾向が見られた.これは,高温時に樹脂の硬化が進み樹脂の靱性が高くなったことによると考えられた.また,熱サイクル数50回から100回では,トランスバースクラック発生ひずみは小さくなり,トランスバースクラック密度は大きくなった.これは熱サイクルによる材料劣化が著しくなったためと考えられた.このような,トランスバースクラックの挙動を説明するため2次元近似弾性解析を行い,トランスバースクラック密度の予測を試みた.その結果,トランスバースクラック発生挙動に及ぼす熱サイクルの影響は,トランスバースクラック発生のための臨界値の変化として評価可能であることが明らかとなった.
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