本年度は、九州大学で開発した簡便なパネル法SQCMをベースにして、圧力一定となるキャビティ形状を繰り返し計算によって求める手法に基づき、部分キャビテーションを起している2次元翼の性能を計算した。 始めに計算法の概略を述べる。翼表面を線要素に分割し、それぞれに一定強さの吹出しを配置する。また、キャンバー面上にLanのQCMの理論に従って束縛渦とコントロールポイントを配置する。このとき、翼後端にコントロールポイントが配置されるので、キャンバー面を貫く流れが無いという条件より翼後端を回り込む流れが無くなり、Kuttaの条件が自動的に満足される。なお、これが簡便なパネル法という所以である。翼の背面に予めキャビテーションが発生する範囲を仮定し、その範囲内では目標速度を条件として、その他の翼表面では翼を貫く流れが無いという物体表面条件を課す。キャビティ後端ではキヤビティの閉塞条件として閉鎖型、半閉鎖型および開放型の三種を考え、それぞれに対応する条件式を導入する。さらにキャンバー面を貫く流れが無いという条件を課すことにすると、吹出しおよび渦分布とキャビテーション数を決定するための連立1次方程式が構成されるので、これを解いて未知数を求める。今、キャビテーションが発生するとした翼背面の範囲では境界を貫く流れが無いという条件は満足されていないので、翼前縁より翼表面の線要素を流れに沿うように再配置する。これがキャビティ形状となる。以上の操作をキャビティ形状が変化しなくなるまで繰り返す。 上記の方法を用いて、東京大学の山口らがキャビテーションの実験に使用した2次元翼型について計算を行った。キャビテーション数とキャビテーション長さおよびキャビティ最大厚さの関係は、キャビティの閉塞条件として半閉鎖型モデルを用いると実験と良好な一致を示すことがわかった。圧力分布についてはキャビティ後端における現象が複雑な個所を除き、計算は実験と良く一致する傾向を示した。また、揚力および抗力については開放型モデルが良い結果を与えた。 以上のように、簡便なパネル法を用いたキャビテーション計算法により、2次元翼に発生する部分キャビテーションの様子を精度良く捉えることができた。次年度は3次元問題へと拡張する予定である。
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